2014年1月25日土曜日

あの頃の仕事・その2

そんな昔を懐かしんでいる頃、ある会社から「耐震改修をすることになったので設計図書を借りたい」とメールが来ました。駆け出しの頃に設計した30年も前の木造住宅で、当時の施主はアメリカに移り、今は中古物件として購入された方が気に入って下さっているとのこと。設計意図など共有できる情報も無いのに改修してさらに住み続けてくれると言うのですからこんなに幸せなことはありません。

住宅の性能は20年ほど前から目覚ましい進歩を遂げ30年前とは考え方も大きく飛躍しました。耐震はもちろん設備や断熱性能など現代の水準に合わせるのは容易いことではありません。はたしてその手間とコストに見合う空間を造れていたのか・・・自問しても答えは無く、全ては住んで下さる方の判断。ただただ感謝です。

段ボール箱の中から古い手描きの時代の資料を引っ張り出して原図を見ると、トレペが破れそうなくらい力いっぱい描いてあります。内容は冷や汗ものですが:-) 施主と連日打ち合わせを重ね、役所をグルグルと廻り 現場のコンパネに原寸を書いて決めたことなどが次々と思い出されます。随分無茶をやったもんです:-)

当時は建築写真家に撮影してもらう余裕も無く、現場写真の切り貼りに挫折してそのまましまいこんでありました。今ならパノラマ合成アプリでなんとかなるかもと試してみましたが、分割数が少ないのでやはり歪みまくりです:-)

設計した建物にはそれぞれに思い出があります。それは施主とのお付き合いの記憶でもあります。設計者が傲慢にデザインを押し付ける、なんてことは無くて、施主の思いを整理しながら一緒に形にしていくので、改めて図面を見るとそこにはあの頃の施主のイメージがそのまま残っていました。

こんなことを懐かしがるのは設計者だけかも知れませんね:-) 何故か今年はそんな年回りなのかと思う今日この頃です。

0 件のコメント: